令和7年12月24日(水)~令和8年2月6日(金)
古代インドで釈迦が仏教を開いたのち、弟子たちによって編纂された経典は膨大な量にのぼりました。さらに中国で仏典が漢字に翻訳されると、重要な部分はどこかについて様々な解釈が生まれます。こうして教理の研鑽が積まれる中で、学派の別を「宗」と呼ぶようになっていきます。東大寺はこうした各宗を兼備する最先端の仏教研究センターとして存続してきたため、修学の所産である「聖教」が今に多く伝えられています。学問寺としての伝統を受け継ぐ総合文化センターの開館十五周年を記念し、「八宗兼学」と言われる東大寺の宗派を一年かけて順番にご紹介します。
『華厳経』は釈迦が成道してからすぐに説かれた教えと言われ、あらゆる物事は相互に関係しあっていることが様々な角度から説明されています。その教主は釈迦としてこの世界に現れた盧舎那仏であり、遍く宇宙全体を照らす光の存在です。これを所依の経典としたのが華厳宗であり、天台宗と同じく全ての人々は成仏できると考える「一乗」の立場をとります。中国・韓国・日本で盛んに研究されましたが、なかでも注釈書として特に重要なのが唐代に華厳教学を大成した香象大師法蔵が著した『華
厳経探玄記』と『華厳五教章』です。そのうち、今回は東大寺の『五教章』研究の歴史をご紹介します。
〈展示品〉
重要文化財 大方広仏華厳経 巻第三(二月堂焼経のうち) 奈良時代(8世紀)
香象大師像(賢首大師法蔵) 室町時代(15世紀)
香象大師像(賢首大師法蔵) 室町時代(16世紀)
重要文化財 華厳五教章 上中下(東大寺聖教のうち) 鎌倉時代・弘安6年(1283)刊
華厳五教章指事 上下 江戸時代・元和2∼3年(1616∼1617)写
重要文化財 華厳五教章類集記 巻第十四∼三十(東大寺聖教のうち) 江戸時代・宝暦11∼12年(1761∼1762)写
華厳五教賢聖章 南北朝時代・応安元年(1368)写
華厳五教章通路記 江戸時代・元禄3年(1690)頃
〈関連展示〉
重要文化財 三国仏法伝通縁起 上中下(東大寺聖教のうち) 室町時代・応永6年(1399)刊
八宗綱要 江戸時代・承応2年(1653)刊
