古美術からみる 東大寺の美

東京藝術大学文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室 企画展
「東京藝術大学が育む文化財保護の若き担い手達」

⬛「東京藝術大学が育む文化財保護の若き担い手達」につきまして

我が国の仏像修復は、東京美術学校(東京藝術大学美術学部の前身)創立者の岡倉天心に指導された新納忠之介らが明治39年(1906)に東大寺を拠点に開始したことを嚆矢とします。
その伝統を脈々と引き継ぐ東京藝術大学大学院文化財保存学の近年の研究業績を東大寺本坊で公開しつつ、百数十年におよぶ奈良・東大寺と東京藝術大学のご縁を再確認いたします。

東京藝術大学文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室 企画展
東京藝術大学文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室 企画展

《模刻・模造について》

明治23年(1890)、岡倉天心らによって古像の模造事業が開始されました。
これは古美術研究・美術教育を目的としたもので、のちに新納忠之介を中心とした文化財としての仏像修復へとつながっていきました。
現在東京藝術大学で行われている模刻・模造研究も、この流れを汲むものと言えます。

模刻・模造の歴史は古く、ヨーロッパでは、ギリシャ彫刻を模したローマン・コピーが有名です。
日本でも、古くは平安時代の仏師が奈良時代の古像を模造したとの文献が残っているほか、現代においても文化庁と公益財団法人美術院国宝修理所によって、国宝の模造事業が継続的に行われています。

では模刻・模造とは、どのようなことを指すのでしょうか。
一般には、「本物によく似せてつくること」を指します。
しかし本展に出品されている作品の多くは、研究を目的に造られたもので、imitation(複製品、偽物)ではなく、reproduction(再生、再現)と英訳されます。

つまり、オリジナルの構造や技法、素材までを可能な限り再現し、当時の技を体得することに大きな目的を持つ、いわば再現制作です。
美術院国宝修理所による模造事業がその最たる例です。

しかし造形面で本物に迫るものでなければ、それは模刻・模造と呼ぶには十分なものとなりません。
また現在では文化財へかかる負担を考慮すると、常に本物を横に並べて制作することはできません。
そこで当研究室では、2004 年より非接触・非破壊の彫刻文化財の三次元計測調査に取り組んでいます。この調査で得られた精密な3D データから、再びアナログな紙媒体の「図面」におこして木材などに描き、手作業で制作します。
また実物を間近で観察するように、高精細な写真や、3D データをモニター上で観察して量感を把握し、実際に自らの手で彫り刻んで当時の技を体得していきます。
もちろん所有者の方からお許し頂いた際には、特別に拝観させて頂く場合もあり、それに越したことはありません。
時には、透過X 線撮影も行い、その内部構造の再現も試みます。

このように私たちの研究室では、模刻・模造を通して、日本に多く現存する彫刻文化財を再発見し、守り伝えていく技術を継承するため、日々活動しています。

東京藝術大学大学院美術研究科
文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室

⬛ 企画展の概要

会期:平成30年7月27日(金) ~ 8月7日(火)
会場:東大寺本坊大広間(奈良県奈良市雑司町406-1)
時間:9:30-17:30(最終受付17:00)
拝観料:200円
展示作品数:30点前後

主催:華厳宗大本山 東大寺・東京藝術大学文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室
後援:朝日新聞社
問い合わせ:東大寺 TEL/0742−22−5511  http://www.todaiji.or.jp

⬛ 研究室スタッフによる講演会

8月4日に春日大社感謝・共生の館で、東大寺と東京藝術大学との歴史や、仏像の模刻や修復を通して得られた知見について、ご紹介する講演会を開催します。

8月4日(土)13:00~16:00 博士研究講演会(春日大社共生の館)

≪1≫ 白澤陽治(非常勤講師、漆芸・乾漆造)
「奈良時代の乾漆技法―高山寺旧蔵両脇侍像の模刻制作を通して―」(30分)
⇒木心乾漆造における木心の精緻な計画性を検証

≪2≫ 鈴木篤(非常勤講師、木彫造)
「平安~鎌倉期群像彫刻における木彫制作技法の一考察―東大寺十二神将像および室生寺十二神将像を通して―」(30分)
⇒平安から鎌倉期に制作された群像表現に、同一図面を裏返して使用した可能性などを論証

≪3≫ 小島久典(教育研究助手、木彫造)
「鎌倉時代の菩薩像における彫刻制作の計画と変更について―東大寺中性院弥勒菩薩像の模刻を通して―」(30分)
⇒慶派が京都へ移ったあとの南都の造仏を担った謎の仏師集団・善派に繋がるミッシンクリンクを解明

≪4≫ 山田修(特任准教授、3D計測・デジタル表現)
「いにしえの東大寺を『立体的』に眺める」(30分)
⇒彫刻文化財の3D技術の第一人者が、創建当初の東大寺をCGで再現

≪5≫ 鼎談
山崎隆之(愛知県立芸術大学名誉教授)、木下成通(公財・美術院、研究室特任教授) 司会;籔内佐斗司
「東京藝術大学と文化財保護」(30分)

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